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【ブラック人事】第二十四話 足音

10月8日。入社6日目。

今日、牧瀬さんに事実を伝えなければならない。
加えて、対処方法についての交渉もだ。

気分を落ち着かせるため、8時過ぎにはオフィスに出勤した。

予定を確認しておく。

≪9:30-10:30 最終面接/人事職志望/B氏≫
≪11:00-14:00 役員会議/六本木≫


午前には先週来社したBさんの最終面接がある。
その後は六本木に移動して役員会議。

湯川と静谷の揃う会議のタイミングで交渉をしよう。




           ***




「なるほど、それで人事がやりたいんだね。」

「はい!
 一からの学びなおしになりますが、がんばります!!」

湯川による最終面接は淡々と進んでいた。
Bさんも流石というか、ポイントを押さえたアピールだ。

合格は間違いないと思われる。


と、湯川が口を開いた。

「とはいえ、ウチもコンサルティングファームだからね。
 一筋縄でいくと思っていてはいけないよ。

 社内には日本なら東大・一橋、
 他にはハーバードとかスタンフォードクラスがゴロゴロいるけど
 大丈夫かな?」


『…』

湯川さん。僕の記憶が確かならば、そんな学歴の人間は居ない。



「すごいですね!
 地頭はとても敵うとは思えませんが、努力でカバーしたいです!」

Bさんが余計に食いついてしまった。


「うん。じゃあお願いしようかな。
 それでは面接は終わりです。エレベータまで送って差し上げて。」


『はい。それではこちらへどうぞ。』

湯川に促され、僕はBさんを伴って受付を出た。





「本日は有難う御座いました!結果が楽しみです!」

『いえ、こちらこそお忙しい中有難う御座いました。』

儀礼的な挨拶を交わす。
通常ならこれでエレベータがやってきてお別れだ。

だが、この時はエレベータがなかなかやってこなかった。
しかも、ホールには僕とBさんしか居ない。


ー救えるのは今しかない。


『-あの。』

「はい?」

『結果は追ってご連絡致します。
 …ですが、お返事を頂く前にもう一度よく考えて下さい。』

「と、おっしゃいますと?」

『貴方が人生に“安定”を求めるかどうかです。

 貴方一人の決断としてではなく、この先に結婚などされて“家族”を
 持たれた時、それでも“冒険”を求める心が変わらないと思うなら…
 この会社は貴方に取ってよいフィールドになると思います。』

「家族も含めて…ですか。

 わかりました、よく考えて返答させて頂こうと思います。
 あ、それでは失礼します。」

エレベータが到着し、Bさんは乗り込んでいった。





『…』

背信行為なのは理解していた。
でも僕は、僕にできる限界ギリギリの方法でBさんに実態を伝えたいと思った。

救いたいと思ったのか。
間違いなく僕より優秀な彼が人事部に来るのを拒んだのか。

慈悲と嫉妬の中間点。
この感情を示す適切な言葉を、僕は知らない。




           ***




六本木。
初日に参加した役員会と同じメンバーでテーブルを囲んだ。


「静谷、どういうことやねん!
 ぜんぜん営業の採用できてへんやないか!!!」

「すみません。対策としては-」


志垣の怒号。静谷の返答。

人員採用に関する激論が交わされているが、
僕はこの後の交渉に神経を削がれるあまり集中できずにいた。








「…君。」

名前を呼ばれた気がする。


『あっ、はい?』

「なぁ?そう思ってるだろ?」


湯川に質問されたようだ。
困った。話題についていけていない。

『すみません。ちょっとボーっとしてました。
 もう一度お願いします。』


「採用者の定着に関する話だよ。
 君だってまだウチでやってけるか不安だよな?」


なんだ、そういう話か。


『ええ、毎日迷ってますよ。』

もう湯川との会話にも慣れた。
本音さえ話しておけば物事はうまく進むのだ。


「そうか。」

その後も上の空の僕をおいて、議論は淡々と続いた。



           ***



20分は経過しただろうか。
いつの間にか別席に移動していた湯川と静谷が戻ってきた。


「事務所戻っていいよ。」

湯川が僕に退出を促す。

『え?でもまだ…』

「いいから。行け。」

交渉のチャンスを伺っていたのに静谷に遮られてしまった。


『??
 …わかりました。』


荷物をまとめて席を立つ僕に静谷が言う。

「あ、あとな。戻ったら俺とのミーティングの時間空けとけ。」

『了解。』



渡りに船だ。その時間に牧瀬さんの件を交渉すれば良いだろう。
そう考えながら、僕はオフィスへと踵を返した。





           ***





午後、自席で作業をしていると静谷から連絡が入った。


「間もなく帰る。
 ミーティングCに入ってて。」

『あ、はい。』





ミーティングC。
…山崎の一件があった部屋だ。

少し心がざわつき始める。




やがて扉が空き、静谷が来た。







「お前には営業をやってもらうことにした。
 “迷ってる”奴なんかに、人事はやらせない。」



窓のない、暗い部屋に静谷の鋭い声が響いた。



【現在時刻 14:49】

--------------------------

次回、最終話。

-------------------------- 


【登場人物】※全て仮名。年齢・プロフィール等はフィクションです。


僕 :26歳。20代にして2度の転職歴を持つ。
   初めての人事職に期待を持ち、中途入社してきた。

中川:27歳。労務部勤務。
   マニュアル対応の際にセリフが極めて棒読みになる。
   若干オドオドしており、目を見て話さない。

静谷:29歳。イケメン。上智大卒。
   20代だが社歴はかなり古参で、人事実務を統括するマネージャー。
   僕の直属上司。質問をすると必ず結論から答える。

湯川:43歳。セレブ。慶応大卒。
   創業者にして代表取締役社長。
   見た目はおとなしそうで、社長特有のオーラは感じられない。

志垣:38歳。一見カタギではない。学歴不明。
   創業メンバーで、現在は営業を統括する社のナンバー2。
   初対面こそ衝撃的だが、NGワードさえ踏まなければ意外に絡みやすい。

西野:35歳。人事領域担当役員。国際基督教大学卒。
   32歳の時に自社に役員待遇で引き抜かれた敏腕コンサル。
   沈着冷静。必要な時以外は滅多に口を開かない。

郷田:28歳。リストラ候補の人事部員。学歴不明。
   前職は健康食品販売会社営業。彼もまた転職者だった。
   自社には営業職として入社するも、1ヶ月で人事に左遷された伝説を持つ。

小森:24歳。新卒採用担当。早稲田大卒。
   新卒入社1年目。年度唯一の人事部配属となった。
   天然ぽい雰囲気と明るいキャラを持ちつつ、発言は鋭い。

山崎:23歳。システムエンジニア。中央大学卒。
   ITコンサルタントを夢見て入社した新入社員。
   大柄の体型とは裏腹に、控え目で実直な青年。

牧瀬:25歳。派遣社員。
   電話応対がとても丁寧で、評価の高い庶務。
   人事部再編に伴い、人員整理の対象になってしまう。

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Comments

okaka ついに最後ですね。

ついに次回が最終回ですね。

結末が、非常に楽しみです。(ドキドキ、ワクワク)

早く明日が来ないかな。

2011/01/20 Thu 00:45 | URL

CA2.0

okakaさん

長らくお付き合い頂き有難う。
ようやく終わるよー。

明日日付が変わる頃迄にはお届けします。

2011/01/20 Thu 00:48 | URL

ma-

お疲れ様です。
もう活動は終わりましたが、実はお聞きしたいことが
ありました。それは・・・
筆記試験と面接の比重です。
内定先の2次面接のときもそうだったのですが
エージェント経由だとよく同じ日に面接と筆記を
やることがあります。
落ちたときどっちが悪かったんだろ~と考えますが
自分はやはり人物重視だと思うので
面接7;3筆記試験くらいかと思っています。
よろしくお願いいたします。

2011/01/20 Thu 17:35 | URL

CA2.0

ma-さん

やぁ、いらっしゃい。
重ねて、今回はおめでとうございました。

さて、ご質問の件。
大枠は2つの傾向に分かれるかと。

1.筆記が足切り扱いになっているケース

比較的基礎学力を重視する企業にあるケース。
効率化のため試験と面接を同時実施するが、筆記が一定水準を下回ると無条件アウト。

転職エージェント的には企業からこんな連絡を受ける。
「あの人、感じは良かったんですが筆記でアウトです。」

このケースを見破るヒントは2つある。
a.試験がPCで実施されるかどうか
⇒即座に結果が判断できるPCテストなら足切り試験の可能性が高い。
b.筆記→面接という順番になっているか
⇒a.と複合して、足切りが決定した候補者については心証を悪くしないようにという情報が面接官に回る。
 なので必ず面接を後回しにすると。


2.筆記は参考程度に、面接を重視するケース

ma-さんが想定されているのとほぼ同じケースだと思う。
割合についても貴殿の見立てと大体一緒。

極端に点数が低い(2割未満)とか、不正が発覚するとかでないかぎり筆記がダイレクトに不合格要因にならない。あとは面接次第。

ムリヤリ100件のテストケースを走らせたとして、筆記だけが原因で落ちるとなると10~20%あるかどうかじゃないかな。

なので9:1ないしは8:2かなというのがお答えです。

2011/01/21 Fri 01:47 | URL

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