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【ブラック人事】第十二話 本音

確かに笑っている。
解雇要件が揃ってひと安心したのだろうか。


と、おもむろに湯川が口を開く。

僕は全身の毛を逆立てるつもりで身構えた。

「静谷。」


何故か声を掛けられたのは静谷だ。


「はい。」


「彼…
 いいじゃないか。」


湯川は笑顔で言った。


「ええ。ようやく殻が破れたようですね。」

静谷も冷静にコメントする。


『え…?は?』



目の前で繰り広げられる会話の意味がわからない。

殻が破れた?
化けの皮が剥がれたではなく?



「しっかしまぁ~こんだけ言う奴も珍しいけどな。」

と、志垣。
何故か彼も笑みをたたえている。



「なぁ、君。」

今後は湯川は僕に話しかけた。


『うぇっ?あ…はい?』


「いい≪質問と主張≫だったね。

 いつもながら、外から来た人の見方は参考になるよ。」


『質問…としゅ、ちょう…?』


「何も浮かばないって、こんなに沢山出てきたじゃないか。」


『え…、いや、それは…
 僕はもう…クビ…になる覚悟で…』


「クビ?

 思う事を質問したり、聞いて欲しいという依頼に応えた
 君がどうしてクビになる?」


「ーあのな、さっきのお前の質問覚えてるか?」

志垣が痺れを切らしたように会話に入ってくる。


『あ、はい。
 創業のきっかけとか、上場の事です…よね?』


「そう、それ。

 …本音ちゃうやろ?
 ≪聞かなあかん事≫無理矢理聞いてるだけやん?」


『…たしかに。』


「お前のホンマの疑問ってそのあと言った事やろ?
 本音隠して迎合してたやろ?」

『あ…、それは…そうですね。』


「そんなサラリーマンはいらんって、昨日言ったよな?
 ウチは本音を話せる人間以外いらんのよ。」


『…なるほど、わかってきました…』


志垣の解説を経て湯川が再び話す。


「そういう環境にいなかったからな。

 人間初めはこうやって凄まれてようやく本音が出るんよ。
 君はギリギリで飛び出したな。
 良かったわ。」


湯川は関西弁のままだが、凄まれていた時とは違って穏やかだ。
これが社内での本来の彼のテンションなのだろうと感じた。


≪本音で話す≫

追い詰められて爆発した結果、僕は彼等の望む返答をしたらしい。



「多分これでわかっただろう?

 これからは全てにおいて本音で話してくれ。
 そうすればうまくいく。」


『わかりました。
 正直…まだびっくりしていますが。』



「うん。
 さて、じゃあ質問に答えんとな。」

『あ、はい。』


質問のことなど忘れていた。
それは自分にとっては質問などという類のものではありえないのだから。


「えーと、全部で4つか。

 まずツナギの連中やな。」


『ええ。』


「≪仕事してる気になってるだけ≫っていうのを防いでるんよ。」


『え?
 …よく意味がわからないです。』

「ん~、例えば君は最初デカイSIerに居たんやろ?」

『ええ。』

「じゃあパワーポイントとかで資料作りとかよくやったよな?」

『そうですね。』

「あれって、仕事してる気になれへんか?」

鋭い指摘。

『…確かに体裁を整えるだけの時間とかはあるような。』


「まぁそれの延長みたいなもんよ。
 パソコン開いて、ソフト起動してるだけで≪つもり≫になってる。

 ウチはもっと前段階で、≪スーツ着てるだけで仕事してるつもり≫
 っていうのをアレで防ぐんよ。」

『ツナギで…ですか?』

「うん。

 だって朝ツナギ着て来てみ?
 席に座ってても落ちつかへんし、もう仕事するしかないやろ?」


そりゃそうだ。
ある意味気持ちを理解してしまう自分が居た。


『なるほど…。恥ずかしいから…必死になるでしょうね。』


「理解できたみたいやな。

 次。勤務時間。ああ、なるほど。
 これはな~…うん。

 君はウチの社員やけど、個人事業主、社長でもあるねん。」


『え?社長…ですか?』


「そう、≪一人ひとりが社長≫というのは募集要項でも説明してるよな?」


≪社員一人ひとりに経営者視点を持って頂く…≫
確かに記載はあった。
そして、その意味についてはある種の流行り文句であり、
個人主義的、成果主義的な社風の表れ…くらいにしか理解していなかった。


『はい…記載はありました。』


「伝え方が難しいんやけど、ホンマに社長ってことよ。
 例えば君が起業したとしたらさ、働く時間とか気にするか?」


『好きでやってる事なら気にしないでしょうね。』


「労働時間が割に合ってるとか、合ってないとかはどうや?」


『…気にしてる場合じゃないでしょうね。』


「そう。
 そういうことや。」


説明は終わってしまったようだ。



「次は・・・金、な。
 これも社長やと思ったらわかりやすいやろ。

 社長は社員を雇っています。
 社長の責任は何や?」


『お給料を払う事です。』


「そやな。
 その為に必要なのは?」


『お金です。』


「会社を続けていくために必要なのは?」


『お金…です。』


「はい、正解。

 会社はお金を稼ぐ為にある。
 社長はお金を払わないといけない。

 ≪社会のために~、人類のために~≫って色んな企業は言うけど、

 偽善やと思わへん?」


『う…それは…』


「じゃあ例えば色んな会社があるけどさ、
 社会のため、人類のためやったらいつまでもタダで何かするんやろか?」

『しない…ですね。潰れますから。』


「さて次で最後かな。新卒の子らの事か。
 これはさっきの社長の話と一緒やな。




 ボランティアでやってるんとちゃうねん。
 稼いでくれない人間を生かすために、

 残りの全員を犠牲にできへんのよ。」



           ***



質疑の後、僕はオフィスへ戻された。


予定されていた打ち合わせや面接の同席をこなし、
日報を書き終える頃には時計は午前を少し回っていた。



特別疲労を感じる訳でもなく、
自身の現状を嘆くわけでもない。






『全部本音で話してればいいんだ。
 そうすれば生き残っていけるんだ。』




帰途についた僕の心には、
それだけが深く深く刻み込まれていた。



【現在時刻 00:04】



【登場人物】※全て仮名。年齢・プロフィール等はフィクションです。


僕 :26歳。20代にして2度の転職歴を持つ。
   初めての人事職に期待を持ち、中途入社してきた。

中川:27歳。労務部勤務。
   マニュアル対応の際にセリフが極めて棒読みになる。
   若干オドオドしており、目を見て話さない。

静谷:29歳。イケメン。上智大卒。
   20代だが社歴はかなり古参で、人事実務を統括するマネージャー。
   僕の直属上司。質問をすると必ず結論から答える。

湯川:43歳。セレブ。慶応大卒。
   創業者にして代表取締役社長。
   見た目はおとなしそうで、社長特有のオーラは感じられない。

志垣:38歳。一見カタギではない。学歴不明。
   創業メンバーで、現在は営業を統括する社のナンバー2。
   初対面こそ衝撃的だが、NGワードさえ踏まなければ意外に絡みやすい。

西野:35歳。人事領域担当役員。国際基督教大学卒。
   32歳の時に自社に役員待遇で引き抜かれた敏腕コンサル。
   沈着冷静。必要な時以外は滅多に口を開かない。

郷田:28歳。リストラ候補の人事部員。学歴不明。
   前職は健康食品販売会社営業。彼もまた転職者だった。
   自社には営業職として入社するも、1ヶ月で人事に左遷された伝説を持つ。

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